日本の食卓に欠かせない食材である豆腐や納豆の原材料名欄に、「大豆(遺伝子組み換えでない)」という表記を目にすることがありますよね。
「遺伝子組み換えでない」とわざわざ書かれているという事は、遺伝子組み換え食品には危険性があるのだろうかと不安に感じたことはありませんか?
食料を安定的に調達するために開発された遺伝子組み換え技術ですが、その安全性については賛否両論があり、現在でも世界中で盛んに議論が行われています。
遺伝子組み換え食品とは一体どういうものなのか、そしてどんな食品に含まれているのかという事についてまとめてみたいと思います。
遺伝子組み換え食品とは
厚生労働省が発行している「遺伝子組換え食品の安全性について(消費者向けパンフレット:平成24年3月改訂)」では遺伝子組み換えについてこのように説明しています。
生物の細胞から有用な性質を持つ遺伝子を取り出し、植物などの細胞の遺伝子に組み込み、新しい性質をもたせることを遺伝子組換えといいます。(従来の品種改良と違う点は)遺伝子組換え技術では、生産者や消費者の求める性質を効率よくもたせることができる点、組み込む有用な遺伝子が種を超えていろいろな生物から得られる点が違います。例えば、味の良い品種に乾燥に強くなる遺伝子を組み込むことで、味が良く乾燥にも強い品種ができます。
https://www.mhlw.go.jp/topics/idenshi/dl/h22-00.pdf
日本では、大豆やじゃがいも、トウモロコシなど8種類の遺伝子組み換え作物と、7種類の遺伝子組み換え添加物の安全性が認められ、市場に流通しています。
その全ては輸入品なので、現在のところ日本国内で商用目的で生産されている遺伝子組み換え作物はありません。
遺伝子組み換え作物は、食品や調味料などに加工されたり、家畜の飼料として使われたりしています。
遺伝子組み換え食品のメリットとデメリットを考えてみましょう
国は遺伝子組み換え食品の安全性について認めているのですが、それに対して反対意見を唱える人たちもいます。
遺伝子組み換え作物のメリットとデメリットについて触れながら、賛成派と反対派の意見についてもまとめてみます。
遺伝子組み換え作物のメリットとは?賛成派の意見をまとめました。
遺伝子組み換え作物を使って食品を作るメリットとは何でしょうか?
作物によってそのメリットは異なりますが、まとめると以下のような遺伝子組み換え作物の特徴が有益だというのが、賛成派の意見です。
- 特定の除草剤で枯れない
- 特定の成分(オレイン酸など)を多く含む
- 害虫に強い
- ウイルス病に強い
- 生産性が向上する
つまり、遺伝子を意図的に操作することによって、今までよりも少ない労力でより効率的に作物を育てる事ができるという事がわかります。
遺伝子組み換え技術を使えば、食物がより安定的に供給されるようになるというのが賛成派の意見です。
遺伝子組み換え食品のデメリットとは?反対派の意見をまとめました
遺伝子組み換えのメリットが分かったところで、遺伝子組み換え食品を危険視する風潮があるのはなぜか考えてみましょう。
現在、日本で遺伝子組み換え技術に対して「安全ではない」と具体的且つ明確に証明された研究結果はありません。
しかし、安全性が確認されているとされる遺伝子組み換え技術ですが、その研究の歴史は浅いのも事実です。
人体や環境に対して、本当に安全と言うためにはもっと研究実績が必要なのではないのか、というのが反対派の主な意見です。
遺伝子組み換え食品が与える人体への影響
遺伝子組み換え技術は、遺伝子に直接的に作用する技術です。
人類がまだ解き明かしていない謎の多い分野での遺伝子操作なので、その技術自体が不安定なのではないかというのが反対派の意見です。
短期的な動物実験だけではわからない長期的な遺伝子への作用についての不安が完全に取り除かれるまで、遺伝子組み換え技術の使用は控えるべきという声もあります。
遺伝子組み換え食品が与える環境への影響
遺伝子組み換えされた作物の花粉が、遺伝子組み換えされていない作物と受粉したり、遺伝子組み換えされた作物の種が運ばれて管理されていない場所で自生し始めたりすると、遺伝子組み換えされた遺伝子が自然界にも広がっていくというリスクが生じます。
自然界のすべての植物や動物の安全性を人間が確かめ、管理することはまず不可能です。
遺伝子組み換え技術というのは、そのように自然界の生態系自体を脅かす可能性のある影響力の大きい技術だと言えるでしょう。
こちらの情報は、以下のような遺伝子組み換え技術に反対を唱えている団体などのホームページを参考にしてまとめました。
コーンや大豆を使った食品は要注意!遺伝子組み換え食品リスト
それでは、実際に日本国内で流通している食品の中で、どんなものに遺伝子組み換え作物が使われているのでしょうか。
日本で輸入が許可されている作物は以下の8種類です。
- 大豆
- じゃがいも
- なたね
- とうもろこし
- わた
- てんさい(砂糖大根)
- アルファルファ
- パパイヤ
また、日本で輸入が許可されている添加物7種類とその主な用途は以下の通りです。
- キモシン(タンパク質の分解酵素。)
- α-アミラーゼ(デンプンの分解酵素)
- リパーゼ(脂肪の分解酵素)
- プルラナーゼ(酵素)
- リボフラビン(黄色の着色料)
- グルコアミラーゼ(ブドウ糖の製造に使われる酵素)
- α-グルコシルトランスフェラーゼ(酵素)
遺伝子組み換え食品は、表示義務があるので、基本的には原材料名欄を見れば遺伝子組み換え食品が使われているかどうか判断することができます。
しかし、中には例外として表示が義務づけられてはいない場合もあります。
遺伝子組み換え作物使った食品の中でも表示が義務付けられておらず、私たちが口にする可能性が高いものを以下にご紹介します。
醤油
醤油は、遺伝子組み換え食品の表示義務がありません。
大豆の供給の大半を輸入に頼っている日本では、遺伝子組み換えされた大豆から作られた醤油が市場に出回っていると考えるべきでしょう。
コーンフレーク
コーンフレークにも表示義務はないので、遺伝子組み換えトウモロコシが原料に使われている可能性が高いです。
清涼飲料水、加工食品、お菓子などの甘味料
コーンシロップや糖類、果糖、ブトウ糖などと表示されている甘味料ですが、原料には遺伝子組み換えされたトウモロコシが使われている可能性があります。こちらも表示義務はありません。
キャノーラ油
遺伝子組み換えされたなたねを原料としている可能性が考えられます。表示義務はありません。
鶏肉・豚肉・牛肉
これらの家畜には、遺伝子組み換え食品を原料とした飼料が与えられている事がほとんどです。
これ以外に、主な原材料の中で、全体に対する重量の割合が上位3位以外のものについては表示が省略できることになっているなどの例外もあります。
また今回こちらには説明していませんが、他にも7種類の遺伝子組み換え添加物が輸入されています。表示がないから遺伝子組み換え食品を使っていないと考えるべきではないという事がわかりますね。
まとめ
遺伝子組み換え食品は、従来よりも効率的に作物を生産し、安定的な供給につながるという事がメリットです。
一方で、遺伝子という未知の分野に足を踏み入れた技術でもあり、まだまだ解明されていない危険性が潜んでいるのではないかというのが反対派の意見です。
消費者である私たちは、その双方の意見をしっかりと知り、自分にとって納得のできる消費活動をしていきたいものです。
遺伝子組み換え食品には、基本的には表示義務があるので、まずは商品の原材料表示をしっかりと読むことが大切です。
しかし、中には醤油などのように表示の必要のない商品もあります。
もし遺伝子組み換え食品に対して不安な気持ちを持っているのであれば、生活クラブやパルシステムなど、遺伝子組み換え食品の取り扱いを極力避けている食材宅配サービスを利用するのも一つの手です。
中でも遺伝子組み換え食品に対して厳しい独自の基準を設けているのが生活クラブ。
生活クラブは生活協同組合(生協)の一つですが、食の安全に関して様々な取り組みを行っており、特に遺伝子組み換え食品については「疑わしいものは食べたくない」として、やむを得ない場合を除いて、全商品に対して遺伝子組み換え食品を使わないと宣言しています。
市販品では食の安全性についての不安がぬぐい切れないという方におすすめの宅配サービスです。
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